(第33号) 2005年6月3日
政策調査情報 連合北海道 政策道民運動局
2005年 3月 7日
■政策調査情報の内容;北海道子どもの未来づくりのための少子化対策推進条例実施計画素案に関する連合北海道の要請に対する道の回答(3月7日)
※3月に実施計画が正式に決定されました。これに対する、見解は近日明らかにします。
日本労働組合総連合会北海道連合会
会 長 渡部 俊弘 様
北海道知事 高橋 はるみ
北海道子どもの未来づくりのための少子化対策推進条例
実施計画(仮称)素案に関する要請について(回答)
1.実施計画の取り扱いに関して
(1) 北海道子ども未来づくりのための少子化対策推進条例実施計画(仮称)素案(以
下、「実施計画」(素案)という。)は、次世代育成支援対策推進法(以下、「次世代法」 という。)に基づく行動計画や北海道エンゼルプランを発展的に引き継ぐ計画として など、道としての位置づけが行われているが、国の計画や施策、事業主等の「行動計 画」との整合性は、どのように図られていくのか。 |
○ 実施計画の策定に当たっては、国の新たな計画など国の方向性を十分踏まえるとともに、条例に基づき、道独自の取組みを盛り込むこととしております。また、事業主行動計画とは、雇用環境の整備等において大きく関連するものであります
(2) 「実施計画」(素案)の基本的施策は、多岐にわたっており、道としての推進体 制については、既に設置している「北海道少子化対策推進本部」により全庁あげて取 り組むこととされているが、財源の確保などを含めた、権限と実行力の伴う推進本部 とすべきである。 |
○ 少子化対策推進本部は知事をトップに、副知事、知事部局、教育庁、道警本部の各部長を構成員としており、道の最高の意思決定機関として位置づけ、設置、運営しています。
(3) 「実施計画」(素案)は、1月11日に公表され、2月10日まで、道民意見の
募集を行うとされているが、この計画の最終決定まで(原案作成、事業指標の明示等
の具体的スケジュ−ルを明らかにする。 |
○ 今後、道民意見等を踏まえ計画原案を作成し、「北海道子どもの未来づくり審議会」における諮問、答申を経て、3月末までに実施計画(行動計画)を取りまとめることとしています。
(4) 実施計画の期間は平成17年度から平成21年度までの5年間とされ、平成21 年に必要な見直しを行うとされているが、実施から2年目に道民との意見交換等(タ
ウンミーティング)を行うなど、中間的に進捗状況を把握し、平成19年には「計画」
の必要な見直しを行う。 |
○ 計画の推進状況については、毎年、点検評価を行い公表することとしており、必要があれば、計画途中で事業内容等の見直しを検討することも考えています。
2.行動計画策定に関わる道、市町村の役割・責務等について
(1) 事業主(301人以上の労働者を雇用する)および自治体は、次世代法に基づく「行動計画」を策定し、北海道労働局に報告することが義務づけられている。この次世 代法では、事業主は、「職業生活と家庭生活との両立に必要な雇用環境の整備」と「自 らの次世代育成支援対策の実施」、「国および自治体の支援対策への協力」を責務とし ている。 |
@ 道および市町村の事業主に対する役割と責任について、計画に明記する。 |
○ 一般事業主行動計画については、北海道労働局が策定に係る指導等を所管しておりますが、道においても、行動計画の適切な策定が進むよう、北海道労働局と連携を図ってまいりたいと考えています。
また、条例において、事業者は「雇用する労働者が家庭と仕事との両立のための雇用環境の整備に努める」、「道の少子化対策に協力する」との責務があります。
道では、これに基づき、北海道労働局や市町村等と連携し、雇用環境の整備を促進していくこととしています。
A 道は、市町村に対して、どのような具体的な連携を図っていくの明らかにする。 |
○ 道の少子化対策が社会全体の取組みとして実効あるものとなるには、各市町村の行動計画の着実な推進が不可欠であることから、実施計画では、道が先導的役割を果たしながら、市町村と緊密に連携することにより、施策の効果を相乗的に高めていきたいと考えています。
(2) 道内の企業は、そのほとんどが中小企業である現状を踏まえ、300人以下の事 業所・事業主に対する、道としての対応方針または考え方を明らかにする。 |
○ 道としては、関係機関との連携を図りながら、企業へのアドバイザー派遣や積極的な企業に対する表彰、育児休業制度の普及啓発など様々な事業に取り組み、中小企業における両立支援に対する理解の促進や雇用環境の整備に取り組んでいくこととしています。
3.実施計画に各種の事業成果指標を設定し推進を強化する
(1) 「実施計画」(素案)では、道の独自事業などについて、事業指標および成果指 標を設定するとなっているが、基本的施策のすべてについて設定することを原則とし、
公表を行うべきである。なお、事業指標および成果指標の設定については、その見直 しや再設定は、どのように行われるのか。 |
○ 実施計画では、国の特定14事業に加え、道独自の目標設定を明記することとしており、目標値については、事業の推進状況等を勘案し、必要があれば見直すことも考えています。
(1) 「実施計画」(素案)を、男女平等、ジェンダ−フリ−の視点に立ったより良い 計画とするため、「両立指標または男女平等指標」(仮称)の設定について検討し、必 要な基本的施策について、事業指標および成果指標に加えるべきである。 |
○ 御意見を参考に検討させていただきます。
4.「性別による固定的な役割分担意識」「働く場における男女間格差」について
「実施計画」(素案)では、少子化の現状と要因等について、各種統計や道民意識を 含む各種調査に基づいて言及されているが、その根底にある「性別による固定的な役 割分担意識」「働く場における男女間格差」など、男女平等、ジエンダ−フリ−の視 点にたって社会や雇用環境の現状について、問題指摘として加筆・補強すべきである。 |
○ 少子化には、様々な要因や背景が存在すると考えられますが、計画では、一般的に言われている要因以外に、本道の少子化に直接的に影響を及ぼしていると思われる主な事項について記載をしています。
5.「雇用環境等の整備」について
(1) 第2の少子化の現状と課題の(2)の少子化の要因の項目の中で、「労働環境の問題」
には育児休業制度の遅れについて指摘されているが、労働の規制緩和や経済のグロー バル化による競争の激化の中で、人件費の圧縮と雇用の流動化が雇用環境の悪化をも たらし、特に、次代を担う世代の賃金水準や労働条件の低下、不安定雇用(パートタ イム労働、派遣労働、有期契約労働など)の増大と労働の質の劣化が、少子化の大き な要因となっていることを状況認識として加筆する。 |
○ 少子化には、御指摘のように様々な要因や背景があると考えられますが、実施計画では、一般的に言われている要因以外に、本道の少子化に直接的に影響を及ぼしていると思われる特徴的な要因について記載をしています。
道としては、次代を担う若者の自立が重要と考えており、昨年7月に設置した「ジョブカフェ北海道」において、関係機関と連携して若者の就職を総合的に支援しているほか、若者や高校生の職業観の醸成や職業能力の開発、インターシップなどにも取り組んでおります。
(2) 第3の実施計画の目標と取組の2の施策の方向性(1)基本的施策のD「雇用環 境等の整備」は、仕事と家庭の両立を支援する実施計画の中では、根幹的な前提条件 とも言うべき、比重の大きい課題である。条例の第12条並びに推進施策では、意識 や普及啓発等に重点が置かれている。これは、労働法制が国の所管であることから地 方行政組織である北海道は意識啓発や育児休業法の制度の普及などを施策の中心に推 進することとしていると思われるが、実効ある計画とするためには、雇用環境整備は 少子化対策の根幹をなすとの位置付けを明記し、また、そのための労働関係法の整備 に向け国への要望事項として、以下の点を加筆する。
@ パート労働者の均等待遇処遇原則を明文化する「パート・有期契約労働法」、「労 働契約法の制定」
A ILO第111号条約(雇用および職業についての差別待遇の禁止)ならびに第175 号条約(平等なパートタイム労働)を批准する。
B 子ども看護休暇の義務化などをはかり、男女が仕事と家庭を両立できる環境整備 のため、2004年の見直しで育児・介護休業法を抜本改正し、「仕事と家庭の両立支援 法」に改める。関連するILO条約として、第171号(夜業禁止)、第183号(母性保 護) を早期批准する。
C 公契約における公正労働基準を確保する、ILO第94条条約(公契約における労働 条項)を批准する。
D 雇用の分野における男女の均等な機会と待遇を確保するため、男女雇用機会均等 法を「男女平等法」に改正する。 |
○ 仕事と家庭の両立のための雇用環境の整備は、少子化対策の重要な柱と認識しており、パートタイム労働者の処遇改善など雇用環境に係る制度に関しては、必要の都度、国に対し要望してまいりたいと考えています。
6.道独自の施策について
(1) この計画を裏付ける財源の確保について、国に対する要望のほか、道としては、「財源確保の手法に関する検討が必要」との記載にとどまっている。財源措置を含めた道独自の重点的施策を明示すべきである。(本要請書の7.(2)など参照) |
○ 厳しい財政状況の中、実効ある少子化対策を推進するには、新たな財源確保や制度が必要と考えており、道としては、その手法等を十分に調査研究した上で、その実現に向けて、国に働きかけていきたいと考えています。
(2) 事業主行動計画の策定を誘導する施策として、道、市町村の請負・委託に係わる 公 契約にあたって、行動計画の策定を入札業者の資格要件とする。 |
○ 入札・契約手続において、行動計画の策定を優先的に扱うなど、広範多岐にわたる様々な社会的要請に貢献した資格者等に対し、一律に一定の配慮をすることは、地方公共団体の契約制度の根幹にかかわることではありますが、今後、国や他の自治体の取り組み、社会情勢の変化等を見極めながら、研究してまいりたいと考えております。
7.経済的負担の軽減について
(1) 日本の未来を担い、創る子どもたちの成長を支援するためには現行の児童手当を 抜本的に拡充する必要がある。海外における思い切った「児童手当」の拡充は少子化 対策に大きな効果をあげており、「実施計画」(素案)にも「児童手当等の拡充」につ いて国への要望事項に明記されているが、「児童手当をEU諸国並の抜本的拡充」と の文言にするとともに、「乳幼児医療費助成制度の創設」と合わせて子どもの医療費 負担の軽減として小学校卒業まで負担軽減を盛り込む。教育・保育など子育て費用を 所得控除する税制面からの負担軽減を積極的に取り組む。 |
○ 少子化対策において、経済的負担の軽減は極めて重要な施策と考えており、御意見を参考にしながら、国に対し、児童手当の拡充や乳幼児医療費の助成、保育や教育に要する経費の軽減などについて、提言、要望していきたいと考えています。
(2) 経済的負担の軽減施策として、児童扶養手当に対する加算措置、道税制に子育て 費用(保育・教育・幼児医療など)控除制度、母子家庭等への医療費助成制度、事業 主行動計画を策定し効果的な取り組みを行った事業主に対する助成金制度創設など、 国に先駆けた道独自の特色ある施策を検討することを明記する。 |
○ 少子化対策において、経済的負担の軽減は極めて重要な施策と考えており、道では、昨年10月に乳幼児医療給付事業やひとり親家庭医療給付事業の充実や、新たに不妊治療費への助成を開始しておりますが、引き続き、状況を踏まえながら、子育て家庭等の経済的負担の軽減に努めてまいりたいと考えています。
8.子どもの意見反映と子どもの権利条約の普及について
(1) 知事の諮問機関として、北海道子どもの未来づくり審議会と部会が設置が出来る こととなっており、子どもの意見反映のための部会の設置については賛成である。
なお、委員の選出は公募制も導入し、部会は自由な意見表明の場とし公開とするこ とを申し添え、審議会の子ども部会の委員の選出、運営など具体的考え方を明らかに する。また、子どもの意見反映と合わせて、子育ては男女が協力して行うべきものと の視点が育まれるような配慮が求められる。 |
○ 平成17年度から、子どもが意見表明でき、それを把握し、社会に適切に反映する公的な場として、「北海道子どもの未来づくり審議会」に子どもだけで構成する部会を設置することとしています。御意見については、実施に向けて十分に参考にさせていただきます。
(2) 日本は、子どもの権利条約の締結国であり、子どもにかかわる諸権利が擁護され ることが重要であり、部会はそうした認識のもと運営されること。また、「子どもの 権利条約」の理念を地域社会に根付かせ、理念に基づく条例制定に生かされる審議会 の議論を要望する。 |
○ 道の審議会における子ども部会をきっかけとして、各市町村においても子ども会議等の設置が促進されるよう働きかけていきたいと考えており、御意見については、実施に向けて十分に参考にさせていただきます。
以上
■3月に決定された、「北の大地 子ども未来づくり北海道計画」は、北海道のホームページ保健福祉部、子ども未来づくり推進室に掲載されています。
http://www.pref.hokkaido.jp/hfukusi/hf-jktei/homepage/top.htm